伊坂幸太郎『魔王』、『終末のフール』

■伊坂さんを読む。

最近好んで読んでおります。


魔王/伊坂幸太郎 (講談社文庫)

魔王 (講談社文庫)

魔王 (講談社文庫)


終末のフール/伊坂幸太郎

終末のフール

終末のフール



電車の中で細切れにしか読めないのですけど、
そういう時間配分でも非常に読みやすくてよいね。伊坂さん。


前にも書いたけど、やっぱりいつも不思議な手触りだなぁと思う。


数百年前に立てられたカカシが人語を解しても。
音楽を愛する雨男の死神がCDショップに張り付いていても。
小惑星の衝突が3年後にせまっても。


なんだかいつも荒唐無稽なのに、
どれにも共通して流れている不思議な優しい空気がふわりと受け入れさせる。
いつも地味すぎる主人公のせいか、いつも優しすぎる周りのひとびとのせいか。
(実際それぞれの登場人物がゲスト出演したり、世界が少しずつクロスしていて面白い)


「凶暴さと静かさを矛盾なく抱えた」(『鋼鉄のウール』)
という作中の表現がぴったりくるような。
狂気を孕む核を、周囲を常に対流する感情が安定させているような。


できるのなら中学生くらいの自分に課題図書として与えてみたい感じがするw

■目に見えるもの

『終末のフール』はこれまで読んだ5作で最も良かったです。
というかやっぱり設定作りがとてもうまい。
終末モノとしてはベタだとしても、


「8年後に地球に小惑星が衝突するとわかってから5年、パニックと混迷の限りが一巡して、ほんの少しの落ち着きを取り戻したかに見える、余命3年の地球」
なんて、それだけで読んでみたいと思わせる設定だと思う。


とても面白かった。
不器用なボクサーの話と、ニセ家族の話が好きです。



しかしただ1点だけ、登場する女性カメラマンの台詞、
ストイックなボクサーを追いかけるストイックなカメラマンの台詞、

「KOの瞬間ってさ、ファインダー覗いてる場合じゃないでしょ。そう思わない?じかに見ちゃうしかないんだって」
(『鋼鉄のウール』)


これだけは全肯定はできないなー。
本当に、直に目で見るものが常にベストで、レンズをを通したものは絶対にそれを超えられないんだろうか?


さてはて。

■あと2日

この1年ちょっとに撮った写真たちを毎晩眺めています。


いつもいつものことだけど、
「あぁ、そうか。自分はこのときこういうことを思っていたのか(もしれない)」
という遅れた気付きが必ずある。


写真の正直さと、そら恐ろしさと、面白さを同時に感じる瞬間であります。



さて、あと2日。